この記事は、現役の介護福祉士・認知症介護実践者研修修了者・認知症ケア専門士に監修していただきました。
認知症は脳の変性や外傷によるもので、後天的に一旦正常に獲得した認知機能が障害される状態です。認知症に関することを知っているのと知らないのとでは、関係性の悪化防止が随分と違ってきます。
認知症のことを知る
認知症のことを知っていると、認知症かもしれないという気づきの目が増えることになり、早期から支援することで在宅で過ごすことができる期間を長くすることに繋がります。これは、同居に限らず、離れて住んでいる場合でも同様です。
認知症の理解は、介護職員さえ理解していない人も多い中、ご家族に理解して下さいというのは、酷かもしれません。しかし関係性の崩壊や後々の後悔を避ける為にも、避けては通れないことだと思います。
認知症と聞いて思い浮かべられるのは、記憶障害ではないですか?これは割合的に最も多いアルツハイマー型認知症の初期症状であるのと、家族が困っているであろう行動心理症状に直結するので有名ですね。
アルツハイマー型認知症でいうと、時間・場所・人の見当を識別することを障害される見当識障害、失語(2種類あり、言葉は理解できるものの口周りの筋肉をうまく動かせず話せないものと、言葉そのものが理解できないもの)、計画立てて遂行できなくなる実行機能障害、五感に障害がないのに対象を認知しない失認と行動に移せない失行、注意や理解力の低下、が認知症が直接の原因になることで出る症状です。
血管性の認知症は、脳卒中の後発現する認知症ですが、障害された部位により異なります。
母のレビー小体型認知症は、幻視や見間違いに幻聴といった幻覚に関するもの、手足の振るえや跛行などのパーキンソン症状、精神系薬剤に対する過敏性、睡眠障害、症状が1日の中でも変動する日内変動が特徴で、進行に伴いアルツハイマー型も併発することもあります。
前頭側頭型では、何時に何をするといった厳格なタイムスケジュール的な常同行動、自律から外れる脱抑制・社会性の低下(反社会性といわれることもあり、万引きなどから警察沙汰になることもありますが、本人に悪気はありません)が特徴です。
これらの症状に人的な環境(接する態度や言葉がけなど)・環境的な要因(周囲の明暗や音、動きなど)・性格などが合わさり行動心理症状が出ます。直結する症状がそのまま行動心理症状に繋がる事もあります。
少しでも普段の様子に、あれ?と疑問を抱いたのであれば専門科の受診をお勧めしますが、無理矢理連れていくのはやめて下さい。受診を拒否するようであれば、専門科の方に相談すると、信頼できる機関であれば方法を考えて対応してくれます。
認知症を受け入れる
上にも書いた通り、認知症の症状は脳の変性や外傷によるもので、基本的には不可逆性のものです。治る事はありません。いいですか、治る事はありません。
基本的にはと書いたのは、認知症の症状が出るものの治す手立てがあるものもあるからで、それについては後述します。
クロイツフェルトヤコブ病のような、余命が長くても2年程度しかないものを除くと、認知症は早期に発見してアプローチをかける事で、それが早期であればあるほど・アプローチが適切であればあるほど、進行の仕方が異なります。
まさか自分が、何故自分の親がといった戸惑いを持つのは、良いイメージがないでしょうから当然です。否定したくもなるでしょう。
ここで思い出してもらいたいのは、治らないのと早ければ早いほど予後が変わるという事。大事なのは認知症を受け入れて、いかに本人を支援していくかです。
後述すると書いたものは2つあり、慢性硬膜下血腫と正常圧水頭症という名前です。
慢性硬膜下血腫は頭蓋内の脳と硬膜の間に血腫(血の塊)があることで脳が圧迫されることで認知症状が出ます。
正常圧水頭症は脳の脳室というところにある髄液が正常に流れ出さず脳を圧迫することで認知症状が出るものです。正常圧水頭症では歩行が特徴的になります。
いずれも血腫の除去、髄液を流す外科的処置で改善します。
人に相談したり、思いを吐き出す
認知症を理解して、受け入れることが出来たら、周囲に相談して下さい。介護を経験したことがある人であれば、アドバイスをくれるでしょうし、大変さを吐き出す相手になってくれるかもしれません。
周囲にそんな人が居ないという方は、介護サービスを併用している場合は、ケアマネージャーや利用している事業所の職員でも良いでしょう。市町村の高齢福祉課や地域包括支援センターだと、家族介護者の会や催しなどを紹介してくれますし、相談にも乗ってくれます。認知症の人本人と参加できる形のものもあります。
離れて暮らしている場合(遠距離介護)
私のように高齢の親から離れて暮らしている方もいらっしゃることと思います。遠距離介護の方向けに少しお話しします。
同居でもそうですが離れて住んでいる場合にも、何かあってからでは遅いので、どこまで在宅で過ごすのかという線引きを引いておくことをお勧めします。
これは、安全と自立とリスク等色々な要素が絡む上に個人の価値観にも左右されるので明確な基準はありません。そして、事故が100%起こらないことはなく、入所した所で事故は起こり得ます。この為、あくまでも私であればの話ですが、同居している他の家族がいる場合ショートステイなどのレスパイトケアの様なものを利用しても、家族と本人との関係性にヒビが入りそうな所まで疲弊している場合や、生命に係るほどの重大な事故が起こりそうな程進行した場合などと思います。勿論本人の意思もありますので、これは事前にある程度お話ししておく必要もあるかと思います。
この記事を監修した介護職の人は関係性が悪化し、今でも後悔しているそうです。
事前に話しておいた方が良い事としては、終末期なども話し合われておいた方が、お互い極力平穏に済むと思います。点滴や酸素等延命措置を実施したり止めたりされる方も中にはいらっしゃいますので。
本人と地域住民との関係性にもよりますが、認知症であることを伝えておくことで、見守ってくれたり、大きなトラブルに発展しないで済むこともあります。但し、近所に住まれていたら、火事など何かしらの被害を被るのは嫌だし、そういった類の心配をしなければならないのも迷惑だという人も世間には実際居るので、相手は見極める必要があります。
自治体や地域によるかもしれませんが、見守りサービスを行なっているところもあり、安否確認をしてくれるので、それに類似するようなサービスがないか確認されるのをお勧めします。
高齢者向けの食事の宅配をしてくれるサービスもあり、安否確認も兼ねることができますね。
会う機会を意識的に作ることで、認知症の早期発見に繋がる可能性が上がります。この時に見てほしいのは、冷蔵庫に同じものが幾つも購入されていないか、調理器具を焦がした跡がないか、くらいはサッと見てください。そして本人と行動する必要はありますが、理由は何でもいいので、絵を描いてもらってください。上手い下手ではなく、立体的に物を捉えられているかを見てほしいです。他には、買い物に連れ出して小銭で支払えているか・毎回お札で支払っていないかというのも多いパターンです。
また、施設などに入所した場合ですが、面会に行ける時は行ってください。厚生労働省によると、残念ながら、介護の世界では家族や職員による不適切な対応や、虐待が増えています。
面会の回数が多いことで、職員の動きや声掛け、不可解な内出血などに気付く機会が増えますし、熱心な家族だなと心証を与える事で、ある程度の抑止にはなります。本人に対する刺激にもなります。
3人殺害されたニュースは記憶に新しいと思います。それ以外にも全国ニュースになっていますね。大々的に報じられなくても、介護職の耳には都道府県内くらいの話は聞こえてくるそうです。
認知症の重度化と不適切なケアを受ける可能性の相関は比例します。残念なことを書いていますが、事実です。人生の最終章を悲惨なものにさせないように、あなたが目を光らせてください。利用を決める前に、何件も見学に行くのも良いと思います。
さいごに
最後に、進行具合にもよりますが認知症介護を1人で行おうとすると、余程の絆がある人でないと潰れてしまいます。認知症介護とはそれ程過酷なものです。
在宅の場合は家族介護者が潰れると、認知症のご家族の生活は成り立ちません。自分は十分に頑張っているのだということを認めたり、時には息抜きや手抜きをしたりも必要です。
家族に介護している人がいる場合は、それ以外の人が傍観者にならないこと、積極的に関わるのが難しい場合でも、せめて主になっている介護者のことを労うようにして下さいね。認知症の人との関係性だけでなく、家族同士の関係性にも関わります。ひいては介護をしている側・されている側両方の生活の質が掛かっていますからね。
